松久外吉のチラ裏

主に自分の趣味についてひっそりと書きます

(Wintelの)常識でAppleを測るのはナンセンス

Appleはなぜ自ら衰退の道を選ぶのか

 この記事を読んで、思わずApple信者の血が騒いでブコメで熱くなってしまったw。よく、「Appleはクローズドだからいずれ市場でシェアを失って衰退するであろう」という論調を見かけるが、それはAppleの目指す方向性を理解せず、古いWintel時代の常識に囚われた物言いだ。そういう人たちは、現在成功している製品分野の市場でデファクトスタンダードを握って市場を支配することが、メーカーの成功の道だと考えている。確かにそれはほとんどの企業についてはその通りだけど、それをAppleに当てはめるのは間違っている。Appleが本当にWindowsのように市場を支配することを望んでいるのなら、今のようなクローズドな戦略は始めから取らないだろう。あえてクローズドな戦略をとっているのは、自分たちが良いと信ずる思い通りの製品を作るためだ。常々Appleが言っているように、彼らが良いと信ずる製品を作ることがAppleのミッションなのだ。そのためなら、自分たちでiPhoneに最適なSoCまで作ってしまうほどの徹底ぶりだ(参考:「iPhone 5でAppleは独自のチップメーカーになっていた; それが抜群の省電力の秘密」)。他の競合スマフォメーカーは、PCビジネスよろしくOSやCPUを他社から調達しているのに。また、自分たちの想い描くユーザー体験のために音楽業界や携帯電話業界のカタチまで変えてしまった。そんな風にチャレンジを厭わないので、ときにはiOS 6のマップのような大事故を起こすこともあるが(^_^;)。

 また、シェアを取ることが必ずしも企業が生きる道でないことは、シェアの小さなMacで利益を出すことで証明している。企業が生き残る原則は、利益を出し続けることだ。むしろ、薄利多売の価格競争になりつつあるPC市場を見ると、プラットフォーマーであることの方が重要であるように思う。

 ついでに言うと、当該記事は、Appleが特許訴訟に勤しんでいるのは守りに入っているから、と心配しているようだが、別に(強欲な?)特許で競合他社を訴えることとイノベーションする/停滞することは、基本的に別問題だと思うし、次のイノベーションを起こす準備をしていないという証拠にはならない。サッカーでラフプレーをしているからって、ゴールを狙ってない訳ではない。特許訴訟はJobsの時代から行ってきたことなので、まだその流れを継続しているだけなのだろう。いくらAppleでも、そうポンポンとイノベーションを起こせるはずもない。もちろん、Jobsが亡くなってから、Appleはまだ次の破壊的創造を行っていないので、その辺はまだ評価のしようがないのだが。

 むしろ、守りに入るどころか、Wintel的なやり方を捨てていることで、Appleは現在の製品市場での成功に留まることを許されていないのだと思う。Jobsが遺した呪いとも言うべき、Appleの「シェアは二の次で、たとえクローズドでも(他業界を含めて)全てをコントロールして希望する完璧なユーザー体験・製品を生む」というカルチャーがそれを出来なくしている。まさにハイリスク・ハイリターン、常に前進・変化・革新を続け、新しい市場を生み出さなければならない。そのような困難な道を選んでいるからこそ、AppleWintelの常識で測るのは間違っている。同時に、希代の天才(変人)Jobsの定めた困難なやり方を、遺されたAppleの人たちが諸々の理由で継承できなくなって、将来Appleが衰退する可能性は、残念ながら低くはないと思う。